研究概要 |
選定した歴史的街区の250分の1の現状模型にもとづいて,京町家保存型街区の街区モデルを提案した.街区は正方形街区(120m四方)と長方形街区(120m×60m)の2街区で,その内正方形街区について街区内の土地登記台帳の資料等を用い分析・検討した.その成果をもとに,街区変容のシミュレーションを行った. 街区モデルの提案方針は,町家の奥を中庭として開放する空間と街区中央部の開放空間(協調空間と呼ぶ)を連携させるデザイン指針を提示した.この方針をデザイン・ゾーニングと呼ぶことにし,その類型を,保存型,準保存型,修復維持型,近隣町並み対応型,伝統的町家挿入型,新共同住宅創造型の6類型とした. 従来中東アジア地域などのコートヤード・ハウスと町家の比較論を再検討した.中庭型住宅の発生時期には数千年の隔たりがあるが,中庭をポジティブ・ボイド(positive void)と位置づける伝統には共通性があるとの主張を行った. 都心地域で町家の跡地などを利用して,新規に路地を用いた数戸の一戸建て住宅を開発する事例調査,および比較的町並み対応を考慮した高層共同住宅の事例調査を行った.前者では住戸のまわりには居住環境の確保等で改善すべき課題があり,後者では高層建築が背後で周辺へ重大な影響を与えていることなどが明らかとなった.街区モデルついては,以上の知見を総合的に整理し,新共同住宅創造型の具体的な提案をサブモデルとして用いて全体像を具体化し,模型により表現した.
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