地方財政の悪化や少子高齢化の進行は地域社会そのものの存続を危うくしている。同時に地域の姿を個性づけ歴史的環境に裏づけられた景観や町並みもその継承は困難となっている。したがって、地域の景観を構成してきた歴史的建造物の継承は、保存・活用により地域の活性化や将来展望に結びついてこそ、歓迎されるものとなることが理解できる。かつて多くの地方公共団体がさかんに歴史的建造物を民族資料館や歴史資料館に転用した時期があったが、そこでは地域住民の参画が意識されることは少なく、展示に力点が置かれることが多く、まちづくりとの接点は欠如していた。近年、地域住民が主体となって空家等に働きかけをおこない、歴史的建造物を活用したまちづくり拠点をつくる動きがようやく定着を見せ始めるようになった。 本研究の初年度ではこうしたまちづくり拠点施設の事例情報を精査し、管理主体、運営管理方法、用途、保存活用までの経緯等の観点により分類した。歴史的建造物の取得や保存運営管理には莫大な費用を要するため、民間から寄贈を受けて地方公共団体が所有する事例は多いが、運営管理に関しては行政の効率化を進めるため、指定管理者に委託する例が現れている。指定管理者を地域のまちづくり主体が担う場合は住民有志がNPO法人を組織するなどの組織上の工夫が見られ、まちづくり拠点運営の自前性確立への努力が見られるようになっている。活用の実態は、用途の自由度が高いほど利用頻度が高まる傾向となっていることが明らかとなった。岡山県美作市と兵庫県姫路市では、地元住民が主体となった空家を活用したまちづくり拠点づくりの初期的段階に参画し、実測調査に基づいた図面作成やワークショップを実施し、パネル展示による活用提案をおこなった。
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