本研究では、歴史的建造物を活用したまちづくり拠点施設の事例を現地調査し、管理主体、運営管理方法、用途、保存活用までの経緯等を明らかにした。主に大分県臼杵市、福岡県八女市、香川県東かがわ市、三重県伊勢市、静岡県掛川市の事例分析から、近年では運営管理に関して効率化を進めるため、行政や所有者が指定管理者に委託する例が増加しつつあるものの、今なお助成金や補助金などの公的な支援が地域住民による運営管理を成り立たせる基本条件となっていることを明らかにした。これに対して、きびしい地方財政事情の中で歴史的建造物を活用したまちづくり拠点施設運営の自前性確立の動きも見られる。事例として、岡山県美作市において地元住民が主体となった昭和初期建築の空家を活用したまちづくり拠点づくりに着目した。ここでは、NPO法人結成を展望した住民有志による歴史的建造物の保存・活用活動の初期的段階に関して、地域住民がその活動をどのような意識で見守っているかをアンケート調査により明らかにした。こうした保存・活用の動きに対して一部反対を明確にしている回答者があったが、こうした回答者はまちづくり全般に関して消極的な対応をしていることが明らかとなった。この結果、保存・活用に関して自前性を強調できる活動であれば、地域の支持も得られやすく、公的な支援に結びつきやすい可能性を有していることが確認された。歴史的建造物を活用したまちづくり拠点施設の設立と運営管理の主体は行政から地域へと確実に移行しつつある。
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