近世橋本の町並みにおける一つの側面である宿場としての実態とその都市史的意義・構造を紀ノ川との関係で明らかにするため、本年度は従来調査の行き届かなかった橋本の西隣に当る東家(とうげ)地区の建築・町並み調査の実施を行った。 先ず当該地域における予備調査として建築写真の撮影などの概要調査を行い、本調査として東家地域において外観を中心とする悉皆調査を実施して台帳の作成、更に橋本及び東家地区においては坂井家住宅(東家:主屋18世紀後半)、堀江家住宅(東家:主屋19世紀初期頃)、山本- 山田- 井本家住宅(橋本:昭和時代初期)、土生家住宅(東家:主屋18世紀中期)、畑中家住宅(東家:主屋18世紀後期)、加藤千佳夫家住宅(橋本:大正13・1924年末頃)、佐藤家住宅(東家:19世紀中期頃)旧消防団倉庫(東家:昭和時代末頃)において建築調査を実施した。 但し、東家地区でも旧大和街道に面してはかつて宿屋を営んだとされる住宅は今の段階では発見されず、いずれも商店や住宅としての歴史を持ったことが確認された。主屋は18世紀に溯るものも多く、店舗併用住宅に復原できるものが目立つ。また、旧大和街道に面して商店を営んだ長屋建築も確認され。橋本地域では数少ない種類住宅であり、両町の差異を見ることができた。 資料調査では、近世末期の姿をよく伝えるであろうと考えられる東家地区の絵図を発見することができた。今後はこれらの資料の解析等を通じて東家地区の特質を紀ノ川との関連等と考察したい。
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