本研究は、2004年に発見された仮議事堂(初代国会議事堂)の図面をきっかけに、関連文献の収集を通じて仮議事堂を建築史的に復元考察しようとするものである。平成17年度は、仮議事堂に関する明治期の文献とともに、多数の絵画資料(錦絵、石版画、銅版画)を収集した。また、仮議事堂の原案を作成したエンデ&ベックマン建築事務所の所員パウル・ケーラーとアドルフ・シュテークミュラーについて夏期(8月〜9月)を利用してドイツにて資料を収集した。 これらの成果を踏まえて、12月、日本建築学会計画系論文集に「国会仮議事堂の図面の変遷史-わが国の国会仮議事堂に関する研究」を投稿した。同論文は国会議事堂の原案(西洋式)、同第2案(和洋折衷式)から仮議事堂として完成するまでの図面の変遷過程を明らかにしたもので、平成18年の同学会計画系論文集6月号に掲載が決定している。 さらに、2005年度日本建築学会関東支部研究発表会(3月11日)にて「初代国会仮議事堂(竣工1890年)の小屋組について」と題する論文を発表した。これは、仮議事堂議場内の天井ならびに小屋組の様子を伝える絵画資料(錦絵、石版画、銅版画)、残された外観写真、同時代の類例建築を参照しながら、仮議事堂の小屋組の架構法を明らかにしたものである。研究の結果、仮議事堂の小屋組は、当時わが国で「ドイツ小屋」と呼ばれていた技法を用いて、それをタイ・バーで補強した混合構造で作られていたと考えられること、その技法は同時代のドイツで仮設として建てられていた祝典会場のそれに類似していたことなどを解明できた。 今後は、仮議事堂に用いられた構法をさらに詳細に分析して、日本建築学会計画系論文集に投稿するレベルにまで高めるほか、屋根葺き材料の特定を進めるとともに、絵画資料から見た仮議事堂のイメージの変遷をまとめていく。
|