研究概要 |
前年度に引き続きL1_2型構造をとる金属間化合物Ni_3AlおよびNi_3Gaについて組成の異なる数種類の試料を用いて擬弾性緩和の測定を行った.Ni_3AlにおけるAl原子の拡散およびNi_3GaにおけるGa原子の拡散は研究代表者が以前提唱したα副格子空孔機構によりおこると仮定して,得られた緩和時間の値からAl原子およびGa原子の拡散係数を求めた。Ni_3GaにおけるGaの拡散係数の値,温度依存性,組成依存性の全てがトレーサー拡散実験により直接測定された拡散係数(池田輝之,京都大学学位論文,2000年)とよく一致し,この擬弾性緩和現象がアンチサイトGa原子の応力誘起再配向に起因していることが裏付けられた.この結果により,L1_2型A_3B結晶におけるB元素の拡散係数を擬弾性緩和の測定により求めることができることが明らかとなり,Ni_3AlにおけるAlの拡散係数(トレーサー実験が難しく直接測定できない)を求めることができた.この方法を,超高融点金属間化合物Ir_3Nbにおける拡散の研究に応用することを計画し,手始めにIr_3Nbにおける化学拡散の測定を開始した.また,E2_1型(ペロブスカイト)構造をとる酸化物における酸素の拡散の測定をこの方法で調べるため,立方晶ペロブスカイト(Ba, Sr)TiO_3(チタン酸バリウム・ストロンチウム)の試料を作製した.良質の試料を作製するのにかなり時間がかかり測定には至らなかったが,最終的には良好な試料が得られたので今後順次測定を行い研究を完遂する予定である.
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