研究概要 |
1、試料作成の高精度化(竹屋、戸叶) 現在行っている合成法には、アーク溶解法や高周波加熱法、Ta管封入加熱法の3つの方法がある。Liは蒸発しやすい金属であること、LiとBは一般な物理的分析法であるEDAX(エネルギー分散型X線分析)では正確な組成を決められないことなど試料作製・評価に難かしい点があった。それらの方法による試料合成プロセスを検討した結果、最も容易に良質な試料が合成できる方法は、アーク溶解法であった。場合によって650℃〜750℃のTaチューブ封入アニールを施し、良質な試料が得られるようになった。Li量を変えながらICP法により組成を正確に決め、超伝導転移温度Tcの測定を行い、組成との関係を求めることができた。 2、超伝導特性(竹屋、平田、Massalami) Li_2Pd_3B及びLi_2Pt_3Bの低温における比熱の測定に行い、基本的な超伝導に関する物性パラメータを決定した。その結果、Li_2Pd_3B(T_c=8.0K,γ=9.0 mJ/mol K^2,β=1.08 mJ/molK,θ_D=221K,Δ=C/γT_C=2.0)、Li_2Pt_3B(T_c=2.5K,γ=7.0mJmol^<-1>K^<-2>,β=0.98 mJmol^<-1>K^<-1>,θ_D=228 K,ΔC/γT_c=1.39)となった。ほぼ、BCS的な値であるが、Li_2Pd_3BのΔC/γT_cが2.0と高く、強相関を示唆する値を示した。 3、光電子分光法及び中性子回折法(平田、Massalami及び外部との共同研究による支援、東大物性研、岡山大学など) この物質の超伝導の特徴はPdの3d電子の相関効果というところにある。2で示したようにほぼBCS的な超伝導体であるとみなされるが、バンド計算によればフェルミ面の状態密度に関してはLi_2Pd_3BよりもLi_2Pt_3Bの方が高く、それらのT_cの値とは逆転しているという矛盾が明らかになった。そこで、光電子分光によりフェルミレベルの状態密度を観測して検証した。この実験結果により、確かにバンド計算通りにLi_2Pt_3Bの方が高いことが明らかになった。矛盾は矛盾のままであるが今後の研究課題の一つである。
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