より高い変換効率を持つセラミックス焼結体を作製することを最終的な目的としてCuOを添加したAgSbO_3を作製した。まず、高い熱電変換特性を示す理由を解明すべく、焼結体中の銀の粒径や分布の状態を調べるため、焼結時間の異なる試料を作製し、熱電特性とその中の銀の微粒子の関係について調べた。このとき、測定には今回購入したGP-IBインターフェース付きのパソコンを使った改良型の電気伝導度測定装置および、走査型電子顕微鏡を用いた。また、試料の作製方法を変え、そのことが熱電特性へ及ぼす影響について調べた。作製方法に関しては、特に次の2つの条件について行い、結果を得た。 (1)か焼条件の影響:固相反応による粉末作製の合成において、原料およびか焼条件(か焼温度、昇温速度、保持時間)を厳密に変化させ、得られたか焼粉末にCuOを加えて得られた焼結体の熱電特性を調べた。その際、スーパー高温函型電気炉を使用した。その結果、焼結体の銀の原料にAgOとAg_2Oのどちらを使っても単相のAgSbO_3粉末が得られたが、これらを用いて作製したAgSbO_3焼結体の熱電特性は異なり、また、か焼条件も熱電特性に大きく影響し、Ag_2Oを用い、10℃/minで昇温し、800℃で30min、保持して作製した粉末を用いた試料が、高温で最も高い出力因子を示した。 (2)原料粉末作製法の影響:焼結体の原料であるAgSbO_3粉末を作る際に、微細で、組成均一性に優れると言われる酒石酸錯体法を用いた。酸化アンチモンを酒石酸水溶液に溶かし、これに硝酸銀を加えることで、原料を液体とすることに成功した。これを乾燥させ前駆体を作製後か焼することより粉末を得た。液相からの合成により、低温でAgSbO_3単相が得られることを期待したが、実際には前駆体を900℃で2回焼成する必要があった。しかし、この方法で得られた粉末にCuOを添加して得られた焼結体試料の熱電特性(出力因子)は、固相反応法から得られたものよりも優れていた。
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