研究概要 |
より高い変換効率を持つセラミックス焼結体を作製することを目的としてCuOを添加したAgSbO_3をはじめとするナノ粒子の金属を分散させた半導体焼結体について調べた。まず、AgSbO_3系が高い熱電変換特性を示す理由を解明すべく、焼結体中の銀の粒径や分布の状態を調べるため、焼結時間の異なる試料を作製し、熱電特性とその中の銀の微粒子の関係について調べ、作製方法に関して、(a)か焼条件の影響と、(b)原料粉末作製法の影響について検討した。また、CuO以外に、ZnO, CoO, Fe_2O_3, PdO, WO_3を添加した系についても評価した。また、金属ナノ微粒子を半導体に分散させた系として、LaCoO_3中へのCa_3Co_4O_9についても実験を行った。以上の結果、次のような知見を得た。 (1)AgSbO_3焼粘体作成の際の合成条件やか焼条件の検討より、この系の熱電変換効率が微細に析出している銀粒子のサイズや分布状態に影響を受けることを見出した。 (2)AgSbO_3にZnO, CoO, Fe_2O_3あるいはPdOを添加すると電気伝導度が向上しゼーベック係数の絶対値が減少することを見出し、これらの酸化物の添加によりキャリアが増加したことを示した。 (3)La_2NiO_4にFe_2O_3を添加することで、LaNiO_3を析出させることは成功したが、キャリア濃度が低下し、性能の向上を得られることは難しかった。 (4)AgSbO_3の状態密度計算により、伝導を担っている軌道はアンチモンの5s軌道であり、この軌道の改良が、高い熱電変換効率をもたらすと考えられる。
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