研究概要 |
Mn-Fe-Ni 3成分系やMn-Co-Ni 3成分系酸化物焼結体は,温度センサの1つであるサーミスタ材料として幅広く利用されている.通常これらの結晶相は,スピネルと岩塩型の混在であり,結晶相の存在割合によって電気的特性は変化した.我々はMn-Co-Ni 3成分系において電気的特性が安定と考えられる立方晶スピネルの単一相領域を求め,各焼結体の電気的特性の組成依存性について評価してきた.しかしMn-Fe-Ni 3成分系では,Mn-Co-Ni 3成分系のような系統だった研究がなされていなかった.そこで本研究ではMn-Fe-Ni 3成分系に着目し,この系における立方晶スピネル単一相領域の探索を行い,単一相焼結体の最適な作製条件を見出すとともに,その電気的特性を評価することを目的とした.1年目においては800℃での単一相領域を明らかにした.そこで今年度では,1000℃における単一相領域を探索するとともに,立方晶スピネル単一相焼結体の作製条件を検討した. 実験はまず単一相領域を検討するため,Mn, Fe, Niの各組成試料を1000℃で焼成した後,急冷してX線回折を行い結晶相を同定した.次にMn : Fe : Ni=1:1:1試料を用いて1000〜1400℃で焼成して焼結温度を調べるとともに,1000℃での熱処理時間を検討し,単一相焼結体の作製条件を求めた. 結果として,1000℃での立方晶スピネル単一相は,Mn : Fe : Ni=0.5:1.5:1,1.75:0.25:1,2.25:0:0.75,1.25:1.25:0.5で囲まれた領域で存在した.試料を焼結させる温度としては1400℃が適していたが,この温度では,結晶相が立方晶スピネルのMn, Fe-rich相と岩塩型のNi-rich相とに相分離した.以上のことを考慮して立方晶スピネル単一相焼結体の作製条件を検討した結果,Ar中,1400℃で焼成した後,立方晶スピネルが安定相の温度である1000℃で雰囲気を空気に切り換えて48時間熱処理して単一相焼結体が得られた.
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