研究課題/領域番号 |
17560605
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
内田 哲也 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 助手 (90284083)
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研究分担者 |
島村 薫 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (80013506)
松尾 俊彦 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教授 (90211565)
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キーワード | 光電変換色素 / 人工網膜 / ポリエチレン / フィルム / 表面 |
研究概要 |
眼の網膜は大きく分けると視細胞、双極細胞、神経節細胞の3層の神経細胞からなる。角膜から入ってきた光は視細胞で吸収され、細胞膜に電位差を生じ、この信号が双極細胞、神経節細胞を経て脳に送られる。網膜色素変性症、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性症などの病気では、視細胞の機能が失われており、電気的信号を伝達する双極細胞や神経節細胞は健常である。したがって人工的に視細胞と同等の機能を有する膜で光を吸収して電位を発生できれば視力が回復できると考えられている。 本研究ではこのような考えのもと、網膜中の視細胞と同等の機能(光を吸収して電位を発生させる機能)を有する膜の作製を目的とする。本年度は人体への影響の少ないポリエチレンフィルム上への光電変換色素固定化法を確立し、その人工網膜としての機能を検討した。 ・光電変換色素のポリエチレンフィルム上への固定 光電変換色素(NK-5962)をポリエチレンフィルム表面に固定した。ポリエチレンは結晶性であり、その基本構造は分子鎖が折りたたんで形成した板状晶からなる。このフィルムを発煙硝酸処理することにより、分子鎖の折り畳み部分を選択的に酸化切断すると同時に反応性末端基である-COOH基を導入した。続いてフィルム表面に導入された-COOH基を利用して、光電変換色素を固定した。 ・ポリエチレンフィルム上に固定した光電変換色素の機能性評価 視細胞が未発達の時期のニワトリ胚眼球の網膜を使い、ポリエチレンフィルム上に固定された光電変換色素が実際に光を電位に変換し、網膜を刺激できるかどうかを評価した。光電変換色素が光を吸収して電位差を生ずると、網膜細胞内のカルシウムイオンが上昇する。そこでカルシウム感受性色素fluo-4を用い、カルシウムイメージング法により色素固定膜の光応答性の評価を行った。Fluo-4の極大励起波長は494nmであり、カルシウムイオン存在下では蛍光(極大蛍光波長516nm)を発する。またその蛍光強度はカルシウムイオンの濃度に応じて変化する。蛍光実体顕微鏡を用いた観察の結果、色素固定膜は光に応答して視細胞が未発達段階の網膜細胞を刺激し、人工網膜としての機能を有することが確認された。
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