研究概要 |
平成19年度は、強磁場・低温X線回折装置(温度8-310K,磁場5T)と強磁場示差熱分析装置(温度300-700K、磁場15T)を用いて、大きな磁気モーメントをもつMnBiを中心に研究を進めた。その結果、このMnBiは、ゼロ磁場で90Kと630Kで磁気一次相転移を確認した。90Kの磁気相転移は磁気モーメントの異方性に起因する磁気転移(スピン再配列)で、磁場でこの磁気相転移を制御すれば結晶歪みを制御出来ることを明らかにした。一方、630Kの磁気相転移は、強磁性MnBiから常磁性Mn_<1.08>Biと液体Biへの分解反応である。こととき、約14J/Kkgもの大きな磁気熱量効果を示すことを明らかにした。この値はこれまで報告された新規磁気冷凍材料物質の特性に匹敵する。さらに本研究で、この磁気相転移温度が磁場により2K/Tの割合で上昇することを熱分析により明らかにした。45Tの強磁場で、MnとBiの包晶反応温度に達する可能性を見出した。これは、磁場で強磁性体の包晶反応と分解反応を制御できることを示唆しており、磁気科学・磁場中材料開発の観点からも極めて重要な成果である。
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