研究課題
基盤研究(C)
4族および5族金属の炭化物は耐摩耗性や熱力学的安定性に優れ、新たな水素機能性材料として期待される。本研究の目的は、これら炭化物と水素の相互作用を定量的に理解し、機能性材料としての利用指針確立に必要な拡散係数や溶解度などのデータベースを構築することである。TiCおよびZrCならびに同じNaCl構造を有するTiN、ZrNについて、粉末試料を用いて温度773〜973K、水素圧力1Pa〜50kPaで水素溶解挙動を調べ、窒化物は水素と反応しないのに対し、炭化物は可逆的に水素を吸収放出することを見出した。これは、炭化物中に存在する炭素空孔の寄与によると結論した。上述の条件下における水素溶解度は、Ticでは0.1〜1mol%程度で、ZrCでは約一桁低かった。すなわち、炭化物中の平衡水素濃度はいわゆるジーベルツ則には従わず、見かけ上、水素圧の1/4乗〜1/5乗に比例していた。吸収曲線の解析よりTiC中の拡散係数を見積もったところ、振動数因子および活性化エネルギーとして、D_0=10^<-11>m^2・s^<-1>、E_D=87±13kJ・mol^<-1>なる値を得た。この活性化エネルギーの値は、これまでに報告されている炭素の自己拡散の値(208〜460kJ・mol^<-1>)に比べ著しく小さい。すなわち、炭素空孔は水素の溶解に対し重要な役割を担ってはいるものの、水素の拡散が炭素空孔のそれに支配されているわけではない。加えて、V、Nb、Taの表面に厚さ数百nm〜数μm程度の炭化物層(V2C、VC、Nb2C、NbC、Ta_2C、TaC)を形成させ573〜973Kで水素吸収実験を行った。そのままの状態では水素吸収速度は小さかっだが、Pd被覆を施すと速やかに水素を吸収した。従って、これら炭化物は比較的大きな水素透過能を有するが、金属に比べ水素ガス中の不純物により被毒を受けやすいと結論した。
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International Journal of Hydrogen Energy 32・5
ページ: 615-619
International Journal of Hydrogen Energy 32-5
Journal of Alloys and Compounds (印刷中)
Annual Report of Hydrogen Isotope Research Center, University of Toyama (印刷中)
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