研究概要 |
本研究では、ナノ多孔質SnO_2電極について、色素の吸着および太陽電池性能におよぼす効果について検討するとともに、酸化亜鉛(ZnO)短絡防止層の効果についても併せて調査した。 1)SnO_2電極に対する酢酸亜鉛溶液による処理手順を変化させて、太陽電池性能を比較・検討した。その結果、未処理の電極に比べて、前処理と同時処理の電極は、色素吸着量の向上に伴いJsc(短絡電流)が増加した。この結果から、EosinY分子のSnO_2電極への吸着をZn(OAc)_2が促進していることは明らかである。また、Voc(開放電圧)については、未処理の電極に比べて、色素吸着量が向上した前処理、同時処理の電極の場合だけでなく、色素吸着量に変化がなかった後処理の電極の場合も増加した。この結果は、SnO_2表面にZn(OAc)_2が吸着することで、SnO_2から電解液への逆電子移動が抑制されたためだと考えられる。また、同時処理に比べ前処理の電極のVocは減少した。これは、SnO_2電極をZn(OAc)_2溶液に浸漬させた後にEosinY溶液に浸漬させる際、EosinY溶液にSnO_2表面に吸着していたZn(OAc)_2が溶け出した結果、逆電子移動を抑制する効果が減少したためだと考えられる。 2)ナノ多孔質SnO_2電極を用いる色素増感太陽電池の性能は、ZnO短絡防止層を導入することにより、Voc,FF(形状因子)が向上し、全体として変換効率が改善する結果となった。これに対して短絡防止層としてSnO_2やTiO_2を用いた場合は、ZnOの場合のような太陽電池性能の向上は認められなかった。この結果は、ZnO短絡防止層が適度な導電性を示すことに加えて、SnO_2やTiO_2に比べて軟らかい材料であることが影響していると思われる。すなわち、ZnO短絡防止層の上にナノ多孔質SnO_2電極を積層する際の塗布・焼成工程においてSnO_2粒子がZnO短絡防止層に部分的に侵入することで、ZnO短絡防止層が大きな抵抗となることなく、SnO_2表面における電荷再結合のみを抑制できたためであると考えられる。
|