研究概要 |
酸化スズの多孔質電極の色素吸着の際に、色素溶液に酢酸亜鉛を添加するという簡便な方法で,酸化スズ/酸化亜鉛複合電極と類似の光電変換効率向上効果が得られることを明らかにし、この効果について以下の調査、検討を行った。 1)酢酸亜鉛添加量の影響:調査した3種類の色素(EosinY,NKX-2677,N3)すべてにおいて、色素溶液に酢酸亜鉛を添加することで、短絡電流値が増加した。これは、酢酸亜鉛が色素吸着を促進したためである。一方、酢酸亜鉛の添加量が色素に対して過剰になると、短絡電流が減少する傾向が認められた。これは、酢酸亜鉛の過剰吸着による色素吸着量の減少および、励起色素から酸化スズ電極への電子注入速度が低下したためであると考えられる。開放電圧値については、酸化亜鉛添加量の増加とともに向上した。 2)酢酸亜鉛処理方法の検討:酢酸亜鉛を色素溶液に添加するのではなく、酸化スズ電極を色素吸着工程の前後で酢酸亜鉛溶液に浸漬させることで、酸化スズ表面に酢酸亜鉛が吸着する効果を調べた。i)色素吸着工程の前に浸漬する前処理、ii)色素溶液に添加する同時処理、iii)色素吸着後に浸漬する後処理の3通りの方法で酢酸亜鉛処理を行った。その結果、未処理の酸化スズ電極に比べて、前処理と同時処理において、短絡電流値、開放電圧値ともに大幅に向上することがわかった。このことから、色素が酢酸亜鉛を介して酸化スズ電極表面に吸着することが、強く示唆される。また、前処理、同時処理、後処理のいずれの場合にも、開放電圧値が向上した。とくに、後処理の場合、酢酸亜鉛による色素吸着促進効果がないために色素吸着量が少ないために短絡電流値が低かったにもかかわらず、開放電圧が向上していることは注目される。これは、酸化スズ表面に吸着した酢酸亜鉛により、酸化スズ/色素/電解液界面における電荷再結合が抑制されたためではないかと考えられる。
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