研究課題
平成18年度は、ナノ結晶粒化ショットピーニング(SP)後の組織を更に詳細に観察し、また、それに基づいてナノ結晶粒化のための加工条件を調査した結果、以下の新しい知見を得た。1.ナノ結晶粒化SP後焼鈍(600℃,1h)を行ったFe-3.3mass%Siにおいて、ナノ結晶層直下の再結晶粒径は5μm以下であった。これは99%以上の冷間圧延を行った試料を焼鈍して得られる組織と同等である。このことは、ナノ結晶粒化SPにより、試料表面に相当歪5(圧延)以上の変形が与えられていることと、試料表面から内部にかけて著しい歪勾配が付与されていることを示す。この著しい歪勾配が結晶粒の微細化に寄与していることは、前年度に行ったHPT加工の結果より明らかである。2.ナノ結晶粒化SP後の試料を表面から内部にかけて連続的にTEM観察した結果、ナノ結晶層直下の組織で低転位密度の領域が観察された。SPは加工が断続的に起こり、各加工の間で導入された転位の再配列・消滅(回復)が加工発熱により起こると考えられる。そのような組織変化が結晶粒微細化に及ぼす影響を調べるため、Fe-0.03mass%CにHPT加工と400℃の熱処理を繰返し行った。その結果、HPT加工の間に熱処理を行った場合、熱処理を行わなかった場合に比べて、同じ歪量であっても高い硬度を示した。このことから、断続的な加工中の転位の回復や結晶粒界の安定化が、結晶粒の微細化に有効に働くと考えられる。この現象は炭素量の多い試料ほど顕著に認められることから、添加元素の影響についても現在検討を進めている。3.表面ナノ結晶粒化SP材の疲労試験において、ナノ結晶粒化に伴う顕著な特性の向上は認められていない。これは、表面粗さの低下が原因であり、ナノ結晶粒化に伴う特性向上と相殺していることが確認された。今後、表面粗さ等を考慮したナノ結晶粒化SP条件の最適化が必要である。
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