研究概要 |
強塑性加工による結晶粒微細化と転位密度の増加による加工効果を利用して,商業用純チタンを医療用材料として適用可能な程度の高強度化(降伏応力および引張強さの向上)と最適な加工技術の指針を確立することが本研究の目的である.また現在医療用に多く用いられているTi-6Al-4V合金の構成元素であるAlやVの有害性を回避することが大切で,このため純チタンの高強度化は社会的にも強く望まれている. 従来の研究結果からの類推により最初に結晶粒微細化をECAP加工によって達成する.ここでは等軸晶を得るために最適のルートBcを採用し8回パスを400-450Cの条件で行った.塑性加工後においては比較的延性に富み室温で16%もの塑性ひずみが得られた.次に300Cで80%断面減少率の鍛造を行った.その結果降伏応力は940MPa,引張強さは1150MPaが達成された.これは同じ材料の冷間加工によって得られるそれぞれ,500MPaと700MPaに比べて格段の強度向上であり,Ti合金としてよく用いられる,Ti-6Al-4Vを上回る.さらに室温で,応力比,R=-1,応力波形サイン波,周波数10Hzの条件下で,引張-圧縮疲労試験を行った結果10^7サイクルの疲労限は約500MPaに達した.この値は通常の結晶粒の同一材料の250-300MPaに比べて2倍の値である. 以上の結果から,ECAP加工後の鍛造加工は純チタンの引張り強度や疲労強度等の機械的性質の向上に有効であることがわかった.
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