研究概要 |
室温で動作する強磁性誘電体薄膜の物質開発,またシリコンデバイステクノロジーへの応用を目指した機能発現とデバイスデザインを行うこと目標とし検討をすすめた.はじめに,超交換相互作用に関する金森則に基づいた物質設計により,Ba(Co,Mn)O_3バルク材の合成と特性評価を試み,次のような知見を得た. ・Ba(Co_<1-x>Mn_x)O_3ペロブスカイト関連構造化合物焼結体を合成し,その電磁気特性を測定したところ,x=0.10-0.20の組成範囲において50K以下の低温域で強磁性誘電体であることを発見した. ・観察された強磁性は,Co及びMnイオンが酸素イオンを介して磁気的に結びつく超交換相互作用に基づくものであることを明らかにした. ・50K付近で観察された,絶縁体転移はCoイオンのスピン状態の変化に基づくものであることを示した. 上述の結果を得て,Ba(Co,Mn)O_3のパルスレーザー法による薄膜化を試み次のような結果を得た. ・(001)SrTiO_3単結晶基板上に,x=0.1-0.7の組成を持つ単結晶薄膜を合成することに成功した. ・作製した膜の結晶構造は,バルク材の結晶構造とは明らかに異なり,面内に明瞭な4回回転対称を持つ擬立方晶構造を有していた. ・作製した膜はすべての組成域で,5Kから室温までの範囲で強磁性的な挙動を示した. ・電気特性についてはバルク材と同様50K以下で誘電体,それ以上の温度域では半導体的電気伝導を示した. ・磁気特性の相違は,結晶構造の変化,酸素欠損状態の変化に伴うCo,Mnイオンの価数状態の変化に起因していると考えられる.
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