研究課題/領域番号 |
17560624
|
研究機関 | 大分工業高等専門学校 |
研究代表者 |
松本 佳久 大分工業高等専門学校, 機械工学科, 助教授 (40219522)
|
研究分担者 |
南部 智憲 鈴鹿工業高等専門学校, 材料工学科, 講師 (10270274)
|
キーワード | 水素 / 金属物性 / 燃料電池 / 材料加工・処理 / 水素透過膜 / 水素脆化 / 小型パンチ試験 / ニオブ |
研究概要 |
本研究は、金属水素透過膜の水素脆化in-situ測定法を確立して、金属膜中の固溶水素が及ぼす機械的性質への影響を明らかにし、水素差圧に耐え得る新しい金属膜の設計指針の提案を目指したものである。平成18年度は「固溶水素濃度と膜強度との関係、水素や水素化物の熱力学的性質が機械的特性に及ぼす影響を明らかにし、水素透過性能と強度を併せ持つ金属膜の設計指針を提案する」ことを目標にして研究を展開した。得られた知見を以下に要約する。 1.開発したin-situ SP試験装置を用いてパラジウム(Pd)被覆した純ニオブ(Nb)の変形・破壊挙動を調べた結果、673Kにおける延性-脆性遷移境界を示す固溶水素濃度H/Nbは0.3付近にあり、従来のマトリクス中への水素の不均一固溶状態で評価されたNbの延性-へき開破壊境界の水素濃度依存性の報告とは全く異なることを示した。 2.純Nbは実用水素圧力条件下では多量の水素を固溶して激しく脆化するが、固溶水素濃度を低減させることで耐水素脆性が改善出来ることを示した。また、膜の両側で高い水素濃度差ΔCが得られるように合金設計を行えば、高い水素透過能と耐水素脆性を兼ね備えたNb系水素透過膜合金が得られることを明らかにした。 3.Nb-H固溶体(濃度E/M=0.25〜1.0)およびNbH水素化物の全エネルギー計算を行い、水素の溶解エンタルピーの濃度依存性を算出した。また、構造最適化計算より得られた、原子間距離の水素濃度依存性を検討した。 4.Nb-Pd合金について、固溶水素量と耐水素脆性に及ぼすPdの添加効果を調べた。PCT測定を行った結果、Pd量の増加に伴い固溶水素量が減少することを確認した。さらに、水素雰囲気中ではNd-15mol%Pd合金のSP吸収エネルギーは純Nbよりも高くなり、Pd添加によって耐水素脆性が改善することを明らかにした。 以上のように、水素透過性能と強度を併せ持つ金属膜の設計指針の提案に向けた足掛かりとなる結果が得られた。
|