研究概要 |
異種金属の接合は,省資源,部品の高性能化やコスト低減等のために,工業的に非常に重要な課題となっている.本研究では,「継手特性に及ぼす中間層の影響」を解明しやすい純Al/純Niの摩擦圧接に関し,後熱処理条件と層成長,さらに層成長と継手の破断位置の特定,応力・ひずみの観点を含めた継手の破断に関する重要な検討を行い,以下に要約する知見を得ている. (1)継手引張強さは熱処理温度の増加とともに急激に低下し,673K以上ではほぼ0MPaになった.また,境界部の中間層(金属間化合物層)が約(0.5〜2)μmを超えると急激に低下した. (2)後熱処理によって境界部に4つの中間層,Al_3Ni, Al_3Ni2,AlNiおよびAlNi_3相が生成した.これらの層の中で,Al_3Ni_2の生長速度が最も速く,計算によって求めた生成の自由エネルギーも最も小さかった.ナノインデンテーション法によって求めたAl_3Ni_2相(層)の硬さは[HV625〜HV720]であり,Al母材の硬さ[HV48〜HV69]およびNi母材のそれ[HV319-HV348]よりも高かった. (3)598KではAl母材とAl_3Ni層との間,もしくはAl_3Ni層とNi母材との間で継手の破断が生じた.破断面は典型的な延性破面を呈した.673Kの熱処理では,Al母材と[Al_3NiあるいはAl_3Ni_2]層で,772KではAl母材とAl_3Ni_2層の間で破断は生じた.これらの破面ぜい性的な破面を呈した. (4)継手の方向にかかわらず,熱処理後の継手の計算により求めた外周部のAl母材の残留応力は93MPから127MPaの引張であった.この高い残留応力は,中間層と母材との界面で生じる破断の一つの原因となっているものと考えられた. 本研究の結果,異材継手境界部において中間層が成長すると,破断が中間層と母材と界面で生じる.この結果は注目すべき事象であり,母材と中間層との接合力が低下することが一員と推定されるが,今後の重要な課題と考えられる.
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