研究課題/領域番号 |
17560627
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
辻 俊宏 東北大学, 大学院工学研究科, 助手 (70374965)
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研究分担者 |
山中 一司 東北大学, 未来科学技術研究センター, 教授 (00292227)
三原 毅 東北大学, 大学院工学研究科, 助教授 (20174112)
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キーワード | 超音波原子間力顕微鏡 / 弾性特性映像 / 共振スペクトル / 表面電極対 / 強誘電体 / 強誘電体分域 / 分極反転 / 圧電応答力顕微鏡 |
研究概要 |
本研究では、強誘電体材料の実用的な環境における材料評価技術を確立することを目的として、材料の表面に作製した電極対の微小なギャップを利用したデバイスの動作環境の再現およびナノスケールにおける弾性特性評価が可能な超音波原子間力顕微鏡(UAFM)による評価を行った。その結果、以下の成果を得た。 (1)微細なギャップを持つ電極の作製 著しく高い圧電係数を有するPMN-PT単結晶に表面電極対を作製した。リフトオフ加工には真空蒸着が適していた。電界印加時の電極の剥離を防止するために水晶基板などで実績のあるAu/Cr膜を用いた結果、10μmの間隙を十分な精度で作製できた。材料本来の分域構造を保つためにはキュリー点(約130℃)よりも低温で作製する必要があるが、真空蒸着では基板の水冷などの対策を行っても達成が困難だった。 (2)分極反転過程の分域組織の観察・評価 PMN-PTでは分域構造の観察にねじり振動により分極の面内成分を評価するラテラル圧電応答力顕微鏡(L-PFM)が有用である。試料作製の状況(1)からギャップ領域には入熱による脱分極構造が見られたため、DC電場を印加して分極処理を試みた。5kV/cm以下の電場では可逆的な分極反転がL-PFMにより見られ、このとき分域境界は移動しないことがUAFMにより観察された。一方それ以上電場では分域境界は移動して、印加した電場に対して優先的な方位の分域の成長が観察された。これらの結果から熱脱分極組織は表面に局在化した構造であることがわかった。またUAFMにより表面下で分域境界が傾斜して存在していることを支持する結果が得られた。 (3)水平曲げ振動モードの分域境界のせん断弾性特性の評価 ねじりモードUAFMはせん断弾性の情報を得られるが低感度が欠点だった。本研究でカンチレバーのスプリアス応答を抑制した結果、水平曲げモードの測定に成功し感度を改善できる見込みが得られた。PMN-PTに適用した結果、分域境界でせん断弾性が低下する可能性が初めて実証された。
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