研究概要 |
既設のサーボ制御二軸応力試験機を用いて,以下に示す内容で研究を遂行した. 本研究で扱う鋼管は,従来当研究室で研究対象としてきたアルミニウム合金管より延性に優れるため,破断するまでの円管内部の体積が増大することが予想された.そこで,破断させるために必要となる内圧負荷用作動油の吐出量を確保するため,シリンダ容積を従来の2倍に増加させた増圧機を新規設計・製作した. 次に,上記増圧機を研究室所有の2軸応力試験機に組み込み,鋼管を用いて線形応力経路および種々の複合応力経路における成形限界およびひずみ硬化挙動を測定し,成形限界応力がひずみ経路に依存するかしないかは,材料のひずみ硬化挙動の様態に大きく影響されることを明らかにした.本研究で得られた知見は以下の通りである. 1.材料のひずみ硬化挙動が等方硬化則によって表せるような場合,成形限界応力はひずみ経路に依存せず一致する. 2.交差効果により第2負荷経路における瞬間硬化率が低下する場合,ひずみ局所化が急速に進展するため成形限界応力が低下する.ただし,交差効果によって塑性流動応力が上昇するため,結果的に,両者の成形限界応力が一致することもある. 3.負荷中の応力が,線形応力経路に対する成形限界応力線に到達しても,材料が弾性状態にある場合,破断は発生せず,成形限界応力は上昇する. 4.第2負荷における塑性ひずみ増分比が,同じ応力比で比例負荷された場合の塑性ひずみ増分比よりも等2軸引張り方向に傾く場合,成形限界応力および成形限界ひずみは向上する. 5.成形限界時の相当塑性ひずみと応力比を用いて,複合応力経路における成形限界を判定する手法を提案した.
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