研究概要 |
平成18年度においては,平成17年度の実験で得られた知見が現象論的な塑性力学解析によって再現可能であるかどうかを,Marciniak-Kuczynskiモデルを用いて理論的に検証することを目的とした. ひずみ局所化過程を精密に解析するためには,降伏曲面上の尖り点を考慮した構成則を用いることが必要不可欠である.本解析では尖り点を直接モデル化せずに,滑らかな降伏曲面を仮定しつつも塑性ひずみ速度の非法線性を考慮したKuroda-Tvergaardの非法線則を適用する.微小弾性変形および有限塑性変形を考え,変形速度D(速度勾配の対称成分)を次式のように分解する. D=D^C+D^P=D^C+^^・ΦN^P(1) ここで,上付き添え字e, pはそれぞれ弾性成分および塑性成分を意味する.またN^PはD^Pの方向を表し,Φは非負のスカラー値(超過応力関数)である.状態変数はCauchy応力sと直交異方性の方向を表す基底ベクトルn_i,相当塑性ひずみεとする.これらの発展式は次のようになる. ^^゜σ=^^・σ-ω・σ+σ・ω=C^e : D^e=C^e : D-^^・ΦC^e : N^p(2) ^^・n_i=ω・n_i(3) ^^-ε=∫^^<・->εdt,^^<・->ε=√<2/3>^^・Φ(4) ここで,C^eは弾性構成テンソルである.(^^゜・)は客観性のある速度を意味し,スピンωは簡単のため連続体スピンW(速度勾配の反対称成分)とおく.次に,上記の構成式をモデル化し,平面応力状態において,比例負荷および種々の複合負荷を受けるに板材の成形限界解析を行い,成形限界応力のひずみ経路依存性を詳細に解析する,負荷経路としては,2つの直線応力経路からなる複合負荷(複合負荷A)と,除荷せずにひずみ経路を急変する場合(複合負荷B)を解析対象として,成形限界応力がひずみ経路に依存するかどうかを検証した. 以上の数値解析の結果,2つの直線応力経路からなる複合負荷では,第1および第2負荷の間に除荷を含む場合(複合負荷A)は,成形限界応力はひずみ経路に依存しないか,依存したとしてもその程度は小さいことがわかった.一方,除荷せずにひずみ経路を急変する場合(複合負荷B),成形限界応力はひずみ経路に依存することが判明した.
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