研究概要 |
1.新鍛造熱処理を施された基本鋼の組織と強靭性 ・基本鋼(0.4%C-1.5%Si-1.5%Mn-0.04%Al)に800〜900℃で50%ひずみのオースフォーミング後,375〜400℃で500sのオーステンパー処理(以下,γ域鍛造熱処理と称す)を施すことにより,微細均一な母相組織と残留オーステナイト相からなる2相組織が得られた.鍛造熱処理により,母相はベイニテイクフェライトが減少しポリゴナルフェライトが増加した.また,残留オーステナイトの体積率は増加し,炭素濃度もわずかに増加した. ・上記の鍛造熱処理により,全伸びは2相域鍛造熱処理の2倍に増加した.一方,衝撃値は同程度であったが,全伸び一靭性バランスは2相域鍛造熱処理の場合より改善された. 2.強靭性に及ぼすAl添加の影響 ・基本鋼に1.0Al-0.02Nb-0.1Moを複合添加することにより,600-700℃での鍛造熱処理も諸特性を大幅に改善した.この開発鋼の全伸び及び衝撃値は基本鋼の2倍程度に改善され,従来の調質鋼(SCM440)と同等またはそれ以上に達した. ・Al-Nb-Mo複合添加により,母相組織にポリゴナルフェライトが増加するとともに,残留オーステナイトの炭素濃度が大幅に高くなった.前者により,降伏応力の増加も達成できた.また,後者により優れた全伸び・衝撃値バランスが達成されたと考えられた. 3.他の機械的性質の調査 ・基本鋼と開発鋼に新鍛造熱処理を施し,疲労強度,衝撃遷移温度,遅れ破壊強度を調査する実験を開始している。新鍛造熱処理は3月中に終了し,評価試験は4月以降に開始する予定である.
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