研究概要 |
本研究は化学プラントなどの配管の異常腐食を予測することを目的とし,金属材料の腐食と材料表面近傍における流動パラメータとの関係を調べ,予測方法の検討を行ってきた。試験装置内の流動状態の測定および流動シミュレーションを行い,以下の結論を得た。 (1)すき間噴流法試験装置における試験片表面の流体圧測定装置を作成し,圧力の経時変化を解析した結果,大きな浸食が生じる箇所に特徴的な圧力の変動現象が観察された。この結果から材料表面の各所における平均差圧,定常差圧変動,最大差圧変動,壁面圧力を算出した。得られた流動パラメータを浸食量と相関させるために,パラメータの寄与度を示す係数を乗じた推定式を提案した。この式を用いて,浸食分布の異なる黄銅および70銅ニッケルの浸食量に合致するように流動パラメータの寄与度を計算したところ,計算値を実験値にほぼ一致させることができ,推定式の妥当性が確認された。 (2)提案した推定式を実プラントへ適用するため,流動シミュレーションの検討を行った。まず,流動シミュレーションの妥当性を確認するため,試験装置内の流動シミュレーションを行った。計算では解析モデルを2次元軸対称モデルとし,層流非定常計算により材料表面近傍の流れ解析を行った。計算の結果,メッシュを小さくすることによって,流速変動を流動シミュレーションにおいても再現することができた。計算から求められた材料表面近傍の平均流速,流速変動,壁面圧力について実測データとほぼ一致した。 (3)流動シミュレーションから得られた流動パラメータを提案した推定式に代入し,黄銅の浸食量を計算したところ,腐食試験で求められた実測値と良好に一致させることができた。実プラントへの適用については,実プラントの配管における流動シミュレーションとしてオリフィス周りの流動解析を行い,オリフィス下流で流体中の流速変動が生じていることが分かった。計算による流動パラメータを推定式に代入し,浸食量の推定を行うことができた。
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