研究概要 |
錫めっき浴には硫酸-クレゾールスルフォン酸錫溶液を利用した。錫めっきは,素地に市販の真鍮板およびアルミニウム板を対極に錫板を使用して,電流密度20mA/cm^2,電気量5.9C/cm^2,浴温度0,5,10,15,20,25,50℃および無攪拌の条件で行った。錫ウィスカの発生は,錫めっきした試料を温度50℃の恒温器内に静置して光学顕微鏡を用いて評価した。錫めっき膜の残留歪みは,その裏面に歪みゲージを貼った真鍮電極と高感度歪み計を用いリアルタイムで測定した。 その結果,(1)めっき初期に素地とめっき錫間の格子不整合による引張歪みが現れその後圧縮歪みへと変化する。(2)圧縮歪みは浴温度が低いほど大きな値となる。(3)錫電析のための電流効率は浴温度が低いほど減少し水素発生が顕著となる。(4)めっき錫の粒径は浴温度が高いほど大きくなる。(5)電解を停止するとその圧縮歪みは速やかに減少し,その後徐々に引張歪みへと変化する。(6)錫電析以外の電流が総て水素発生に使われたと仮定すると,電解停止直後の圧縮歪みは水素発生のための電流効率に比例して大きくなる。(7)めっき錫内には素地の真鍮から拡散した亜鉛の存在が確認される。(8)錫めっきに伴い共析した水素がめっき膜に圧縮歪みを誘起するとともに,その後脱離することで圧縮歪みの緩和およびめっき錫膜への欠陥の導入をもたらすことなどが明らかとなった。
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