(1)実験装置の設計・製作:直径1mm以下の注射針をガスノズル兼電極とし、現有するプラズマ発生用RF電源/整合回路に接続することで大気圧プラズマジェットの生成を実現した。また、注射針を3次元的に走査するマニピュレータの組み立てを行なった。 (2)プラズマ発光分光分析:マルチチャンネル検出器(浜松ホトニクス、PMA-11)を用いて、プラズマ発光スペクトルを計測し、励起原子・分子の同定、原子励起温度の評価を行なった。 その結果、反応性プラズマが生成されていること、また非熱(非平衡)プラズマであることが明らかになった。 (3)ワイヤー絶縁被膜の剥離実験:電子機器のノイズカット等に利用する超小型インダクターの巻き線(ワイヤー、φ200μm程度)の絶縁被膜の局所剥離を、本プラズマジェットを用いた反応性プラズマによるケミカルエッチングで実現した。処理ガスとしてHe/O_2や空気を用いた。 実体顕微鏡や走査電子顕微鏡(SEM)によるプラズマ照射面の観測で、絶縁被膜が選択的にエッチングされている事が確認された。しかし、剥離後の表面の元素組成を光電子分光分析(XPS)により調べたところ、下地の銅が酸化され酸化銅が形成されていることが分かった。 (4)ナノカーボン物質の局所CVD成長実験:原料ガスとしてメタン/水素を用いて、φ0.5mmニッケル線先端にカーボンナノチューブ(CNTs)を選択的に成長する実験を行なった。メタン比率3〜10%、RF電力6W程度、成長時間1〜2分で、CNTsの束(バンドル)が多数規則的に垂直成長した。各バンドルの径は800nm程度、長さは2〜3μmであった。バンドルの透過型電子顕微鏡(TEM)による構造観察や、ラマン分光分析を併せて行った。
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