(1)ワイヤー絶縁被膜の局所剥離:電子機器のノイズカット等に使用する超小型インダクターの巻き線(ワイヤー、φ100μm程度)の絶縁被膜の局所剥離を、本プラズマジェットを用いて実現した。絶縁被膜の材質は耐熱温度が約200℃のポリアミドイミドである。処理ガスとしてAr、Ar/O_2および空気をプラズマジェット化しワイヤーに照射することで全周剥離を実現した。プラズマ照射部の温度を熱電対で測定したところ180℃程度以下でポリアミドイミドの耐熱温度より低く、またプラズマ発光分光分析(浜松ホトニクス、PMA-11)からプラズマ中に酸素ラジカルの存在が確認された。したがって酸素ラジカルによるポリアミドイミドのケミカルエッチングであることが明らかになった。さらに、実体顕微鏡や走査電子顕微鏡(SEM)によるプラズマ照射面の観測で、絶縁被膜が選択的にエッチングされている事が確認された。しかし、剥離後の表面の元素組成を光電子分光分析(XPS)により調べたところ、プラズマ中の酸素含有量が10%以上になると下地の銅が酸化され酸化銅(CuO)が形成されていることが分かった。 (2)カーボンナノチューブの局所CVD成長:原料ガスとしてメタン/水素を用いて、φ0.5mmニッケル(Ni)線先端にカーボンナノチューブ(CNTs)を選択的に成長する実験を行なった。メタン比率3〜10%、RF電力6W、成長時間1〜2分で、CNTsの束(バンドル)が規則的に垂直成長した。各バンドル径は800nm程度、長さは2〜3μmであった。バンドルの透過型電子顕微鏡(TEM)による構造観察や、ラマン分光分析を併せて行った。その結果、バンドル中のCNTsは竹状(bamboo-like)構造の多層ナノチューブであり、グラファイト構造の乱れを含んでいることが明らかになった。また、バンドルの分布密度はメタン/水素比率、プラズマ電力、成長時間に依存せずほぼ一定値の0.73/μm^2であった。これは、バンドル分布密度が、初期にプラズマ照射により形成されるNiナノ粒子の分布密度で決定される為である。
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