研究課題
基盤研究(C)
現在、従来の無機シリコン太陽電池と比較して大幅な低コスト化の可能性を持つ次世代の環境調和型太陽電池として、色素で光を吸収し電気エネルギーとして利用する色素増感太陽電池が注目されている。本研究では、物理的手法である低温プラズマ修飾法とイオン注入法を併用して光電変換効率10%を達成する新規色素増感太陽電池を開発することを目的としている。本年度で得られた成果を列挙する。1.低温プラズマ修飾法でチタニア表面形態および化学組成を変化させ色素の吸着量を増大させるナノ構造制御技術の開発を検討した。アルゴン低温プラズマ修飾法によってチタニア表面への色素の吸着量を増大させる方法を確立した。その結果として短絡光電流(Jsc)の増大と太陽電池の光電変換効率の向上を確認した。2.チタニアの表面をナノ構造制御することにより、表面構造と表面バンド構造との関係を解明し、ナノ表面構造制御による表面バンド構造改善技術の開発を検討した。さらに、アニオン(窒素)イオン注入したチタニア表面バンド構造と太陽電池特性の関係を解明した。イオン注入量の増加に従って短絡光電流(Jsc)の増大が確認された。これは、チタニアへのイオン注入量の増加に伴い、チタニア電極の電子密度状態が変化したからと考えられる。イオンドープチタニアの電子密度状態の理論計算から、イオンのドープ量が少ない場合は酸化チタンの価電子帯の上に新たな軌道が形成され、またドープ量の増加によりその軌道と酸化チタンの価電子帯が混成しバンドギャプの狭窄が起きることが予見される。イオン注入法は色素増感太陽電池の光電変換の高効率化に有効であることを確認した。
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