現在実用化されている太陽電池にはシリコン太陽電池が使用されているが、製造コストが高いことが普及の障害になっている。一方で、色素増感太陽電池は低価格で次世代の環境調和型太陽電池として注目されている。しかしシリコン太陽電池と比較して光電変換効率(η)が低く、実用化には至っていない。本研究では、物理的手法である低温プラズマ修飾法とイオン注入法を併用して光電変換効率10%を達成する新規色素増感太陽電池を開発することを目的としている。本年度は、色素増感太陽電池の半導体電極である酸化チタン(TiO_2)への侭温プラズマ処理とイオン注入処理の連続処理によって光電変換の高効率化を検討した。本年度で得られた成果を列挙する。 1.各基板温度でイオン注入処理を行ったセルは未処理のセルと比較して短絡光電流Jsc及び光電変換効ηが増大する傾向にあることが確認された。 2.窒素イオン注入の単独処理と(Arプラズマ/窒素イオン注入)連続処理の処理温度依存性について比較検討した結果、293Kで連続処理した場合、光電変換効率ηの最大を示した。また、Jscの最大値は473Kで連続処理した場合であり、単独処理の場合とは異なる傾向があることが確認された。これらの酸化チタン電極のX線光電子分光(XPS)分析より、(低温プラズマ/窒素イオン注入)連続処理ではTi-N結合が形成されることが確認された。そのため、未処理のセルと比較した場合、Jscや光電変換効率の増大が起こったと考えられる。また、処理温度の増加とともに窒素有機物に起因するピークが発現することも確認された。これは光電変換効率の減少と対応しており、関連性があると考えられ、射温度の増加に伴うTi-N結合の増加が光電変換効率の増大に結びつかなかった原因と考えられる。
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