本研究では、平成17年度と平成18年度に低温プラズマ処理法による酸化チタンナノ粒子の表面形態構造と表面化学組成のナノ構造制御を検討し、かつ、酸化チタンナノ粒子への種々イオン(Nなど)のイオン注入法を検討し、表面バンド構造制御技術を確立することを検討した。平成19年度は低温プラズマ・イオン注入法の両手法の最適化を検討した。 1.(Arプラズマ/窒素イオン注入)複合処理を行ったTiO_2電極を用いて作製した太陽電池セルのI-V曲線測定結果より、未処理のセルと比較して、複合処理を行ったセルの場合は短絡光電流(Jsc)が増大する傾向にあることが確認された。これは、チタニア内に形成される酸素欠陥が増大し、その酸素欠陥から生成する電子の余分な電子がN_<2p>軌道から形成される準位に入り、残りが伝導電子になる事により、キャリア数が増大し、Jscが増大したと考えられる。 2.光電変換効率(η)は100及び200WでArプラズマ処理を行った場合では増大したが、50WでArプラズマ処理を行った場合では僅かながら減少する結果となった。この50WでArプラズマ処理を行ったセルはJscの増大が僅かであり、さらにフィルファクター(ff)が未処理のセルに対して著しく低いため、このような結果になったと考えられる。また、X線光電子分光分析(XPS)測定結果からffの減少はプラズマによって表面に出来た活性点がその後のイオン注入時の窒素ガスと反応した結果、表面に窒素不純物が形成し、抵抗となったためであると考えられる。そのため、(低温プラズマ/イオン注入)複合処理ではイオン注入単独処理とは異なる原因でJsc及びηの増大が起こったと考えられる。
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