本研究では3ヵ年の研究期間をかけ、金属表層の加工硬化及び経年劣化に起因する弾性定数の変化を表面弾性波の音速及び減衰率として測定することを目標としている。 本年度は光学測定系の構築、液体での試験測定及び音速測定数値の評価を行った。試料は水とエチルアルコールの混合溶液を使用し、混合比を変えて音速数値を測定した結果、2%以下の音速数値の変化の検出に成功した。先に実施している従来法である接触を伴う超音波法での金属表層での音速測定数値と比較し、加工硬化に伴う音速変化の観測が可能な精度であることを推測した。また、通常の光散乱法では困難である気体の音速測定に成功した。 しかし固体表面での音速測定には成功しなかった。原因としては、測定対象である金属表面近傍の気体からの信号が強いために固体からの信号を阻害している事、金属表面からの弾性散乱光が信号光をマスクしている事等が考えられる。現在はこれらの問題点を解消すべく、感度の向上及び検出器の飽和を回避すべくプローブ光のパルス化及び検出系へのゲート積算器の導入の準備を行った。 また本測定系では音速と同時に熱伝導率が測定可能である事を示した。前年度から始めた準備を終了し工業所有権を出願した。
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