製鋼過程の管理分析では迅速性が極めて重要であるが、広く用いられているスパーク放電発光分析装置の迅速化は、高速度発光、時間分解測光、コンピュータ利用によるシステム化などですでに限界に達しており、分析時間をなお一層短縮するには、分析時間の大半を占める試料調整の簡略化が必要となる。本研究では、荒れた試料表面でも安定なスパーク放電を得るために、鉄鋼試料表面にレーザー誘起プラズマを発生させて、放電を強制的にその場所から成長させて安定化を図り、またレーザーアブレーションによりスパーク放電単独の場合と比べてサンプリング量が増えることによる試料発光の高輝度化を目的として実験を行った。 陰極(Fe板)と陽極(W針)の距離を3mmに設定した場合、電極間に高圧が印加される6〜200μs前に陽極直下にレーザー誘起プラズマを発生させると(レーザーの条件は、波長:532nm、パルスエネルギー:9mJ以上、パルス幅:10ns、集光レンズの焦点距離:100mm)スパーク放電が安定して起こることが分かった。またFe I 373.5nmの発光強度についてレーザー誘起プラズマ単独の場合(LIBS)と比較したところ、本法の方が約30倍発光強度が大きいことや、レーザーアブレーションによるサンプリング量増加分による高輝度化は50%程度であることが分かった。レーザー誘起プラズマが発生してからスパーク放電が進行する様子は、高速シャッターCCDカメラ(露光時間:1μs)により撮影したところ、スパーク放電が起こるために必要な電子は、レーザー誘起プラズマ中に含まれる電子に加えて、レーザー誘起プラズマが消失した期間では、加熱された試料表面から発生する熱電子であることや、W針陽極を試料と水平方向に±2mm動かしても、スパーク放電がレーザー誘起プラズマ発生地点に誘導されることが分かった。これらの結果は現在論文として投稿準備中である。
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