スパーク放電発光分析法で鉄鋼の分析を行う場合、試料表面に非金属介在物が析出した場所での分析結果は鉄鋼試料の平均組成からはずれたものになり、その正確さは低下する。またスパーク放電は毎回必ずしもその特定場所で起こるわけではないので、一発の放電ごとの分析値が大きく変動し、分析精度も低下する。もし、スパーク放電の開始地点を自由に制御できれば、上に述べた問題が解決できるため、本研究では鉄鋼試料表面にレーザーを照射してレーザー誘起プラズマを発生させ、スパーク放電を強制的にその場所から成長させることにより、スパーク放電開始点を制御することを目的として研究を行った。スパーク放電開始点の制御法は平成17年度の研究で開発できたため、平成18年度はその発光スペクトルの特性について調べた。スパーク放電が停止した状態ではレーザー誘起破壊発光スペクトル(LIBS)も同時に測定できるため、LIBSと本法を比較したところ、LIBSのみの発光強度に比べて本法では、i)約30倍ほど発光強度が上昇すること、ii)本法のFeの発光強度が、スパーク放電単独の場合に比べて約1.5倍に増加すること、iii)S/B比は本法が、LIBSに比べて約1桁悪化していることがわかった。今回の実験ではa)発光スペクトルは大気中で測定しているため、この測定雰囲気は本法にとって最適ではないこと、b)測光は光ファイバーで直接行っているため発光信号は最適条件で取り込めていないこと、c)今回の実験では検出器(ICCD)のゲート幅を1msとしたため連続バックグラウンドが強調されてしまったことを考慮すると、本法がLIBSに比べて1桁以上大きい発光強度を容易に得られることは、迅速分析という観点から非常に魅力的な分析法であることがわかった。
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