研究概要 |
本研究では,鉛レス青銅とリン青銅を素材として,溶湯を冷却すると同時にストロークの小さい押出を繰り返す振動押出により,前者の合金では固相粒子が細かな粒状となり,後者の合金では固相粒子は粒状化すると同時に第二相粒子も微細分散した流動性に富む半凝固スラリーの製造を試みる.また,これらのスラリーを用いて半凝固鋳造を行い,両合金の高品質鋳物を成形するために,前年の平成17年度においては,初期実験として,アルミ合金を用いて,振動押出の効果が得られる適正なストロークや振動数の範囲を明らかにし,実際に,AC4CHと7075及びA390の各アルミ合金を用いて,前者の2種類のアルミ合金ではα相の粒状化,後者のA390合金ではα相の微細粒状化に加えて初晶si粒子の微細均一分散化を試みた.その結果,AC4C合金では若干α相の粒状化が悪いが,7075合金では平均粒径が70μmの固相粒子がかなり均一で粒状のスラリーが得られた.また,A390合金ではα相の微細化と初晶Si粒子の微細分散化が得られ,アルミ合金における本法の有用性が見いだせた.そこで,H18年度においては,当初計画より少し遅れたが,鉛レス青銅用にモリブデン製内径24mmのコンテナ及びダミーブロックを用いて,溶湯温度を液相線直上の1020〜1060℃,ストロークを20〜30mm及び振動数を3〜10Hzでそれぞれを組み合わせた各種条件でスラリー製造を試みた.その結果,溶湯温度1020℃,ストローク25mm,振動数10Hzで固相粒子が平均径で60μm程度のスラリーが量的には少ないが製造可能となった.次いで,計画が遅れていることもあり,鉛レス青銅の半凝固鋳造に先立って,リン青銅のスラリー製造を試みた.しかし,このリン青銅では液相線温度が鉛レス青銅よりも50℃ほど高く,このため振動押出開始時にモリブデン製コンテナが変形して溶湯漏れが起こり,スラリー製造が困難であった.そのため,現在,コンテナを窒化珪素製に変える方向で検討中であり,製作を依頼して出来上がり次第,実験を再開してスラリー製造を試みる.また,良好なスラリーができ次第,両合金で半凝固鋳造を実施し,鋳造品の諸特性調査するという当初の計画を遂行する予定である.
|