研究概要 |
本研究では1枚の多孔質膜の裏・表で親・疎水性の性質が異なる膜を作成し,表面側に液体膜を含浸し,裏側面でそれを支持するというアイデアによる「表面含浸型液体膜」提案する。疎水性多孔質膜の片側面をコロナ放電により親水化処理することで,このような膜内部表面特性が非対称な多孔質膜を作成できる。この考案により,液体膜の薄膜化による分離性能向上と膜モジュール製作が簡単になり,液体膜の実用化に近づくと期待される。本研究ではこの片側含浸液体膜の実用化を目標に,含浸膜の作成法,液体膜の耐久性を検討し,水蒸気,炭酸ガス等の各種ガス・蒸気の分離性能および,分離に適切な液体膜成分の探索,膜装置の性能等の検討を目的とした。本年度の研究成果は以下のようである。 A.本液体膜による除湿装置を構成した。液体としてトリエチレングリコールを用い,この平膜モジュールと真空ポンプで構成される。装置は膜裏面の片側よりSweep airを流し,これにより膜に吸収された水蒸気を回収する形式で空気からの除湿をおこなうものである。膜面積280cm2の装置により,湿度60%RH,室温の条件で1-2g/hの凝縮水を回収できる性能を達成した。透過係数にもとずくモデルでこのプロセスを解析した。 B.もうひとつの応用として空気中の炭酸ガスを濃縮した空気の供給装置を構成し,その性能を検証した。液体膜成分としては炭酸ガス吸収液であるジグリコールアミン液とトリエチレングリコールの混合液体が最適であった。膜面積900cm2の平膜モジュールと真空ポンプ,Sweep air用のニードルバルブからなる簡単な構成で,Sweep air中に空気から炭酸ガスを吸収して濃縮する装置を構成した。この装置により大気中の炭酸ガス(400ppm)から5000ppmから10000ppm濃度の炭酸ガス濃縮空気を0.1-0.5L/min供給する性能を達成した。透過係数にもとずくモデルでこのプロセスを解析した。
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