研究概要 |
含浸型液体膜によるガス・蒸気透過分離プロセスを実用化するには,液体膜の減圧・加圧操作可能な構成を工夫する必要がある。本研究では超疎水性多孔質膜の片側面のみを親水化し,その面に不揮発性で親水性の液体を含浸する方法で液体膜を構成した。疎水性膜の裏側面の撥水性により,表側面の含浸液体を減圧・加圧操作下で保持するものである。この液体膜構成法により供給側大気圧,透過側真空のガス・蒸気透過分離操作を実現した。これを表面含浸型液体膜と呼ぶ。先ず液体膜成分をトリエチレングリコールとして,この液体膜装置を除湿機として構成し,その性能を検討した。膜面積280cm2の小型平膜モジュールと真空ポンプの簡単な構成により,膜モジュールの透過側入り口からSweep Airを導入し,膜モジュール出口に接続した真空ポンプの出口で大気圧に戻ることで,凝縮水が得られる。この方法で,1-2g/hの凝縮水が得られる除湿機となることが示された。次いで,空気中の炭酸ガスを回収するプロセスを検討した。ここでは液体膜成分としてジグリコールアミン液体を用いる。アミン液は空気中の低濃度の炭酸ガス(400ppm)を選択的に吸収し,減圧された膜の透過側に促進輸送する。膜モジュールの透過側入り口からSweep Airを導入するとこれに空気中からの炭酸ガスが透過する。膜モジュール出口・真空ポンプ出口からのSweep Air中に炭酸ガスが濃縮されるプロセスである。膜面積1300cm2の中型平膜モジュールと10Wの小型真空ポンプからなる実験装置によりこのプロセスの性能を検討した。例えば1800ppm-CO2にCO2濃度が濃縮された空気を1L/minの供給量でえることができた。この炭酸ガス分離性能を別に測定した膜透過係数によるモデル計算と比較することで,このプロセスのモデルを確立し,今後の実用計算の基礎とすることができた。
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