研究概要 |
(1)マイクロ波照射下における有機化合物の結晶化挙動に関する検討 マイクロ波は極性分子を選択的に振動させる性質を有している。そこで、結晶核形成をコントロールできる新たな晶析操作の開発をめざして、有機化合物の結晶化に及ぼすマイクロ波照射の効果について検討した。モデル系として、水難溶性で極性基を有するイブプロフェン(IBP)と非極性溶媒であるヘキサンを用い、マイクロ波照射によって結晶化時間や結晶形状、結晶構造に変化があるか調べた。マイクロ波発生装置としては、均一な電磁波を連続的に照射できるIDX社製グリーンモチーフを用いた。溶媒にヘキサンを用いた時は、マイクロ波照射の有無に関わらず、結晶が長時間析出しなかった。次に溶液に0.35%のアセトンを溶液に添加して結晶化を行った。マイクロ波を照射しない場合、約30分後に結晶が析出しはじめたが、マイクロ波を照射した場合は、少なくとも260分間結晶化しなかった。マイクロ波照射によってIBPの極性基が振動することによって、核形成が抑制されたと考えられる。この結果より、マイクロ波を照射する晶析操作が、核形成のタイミングを制御することにつながると結論した。 (2)高速撹拌機を装備したmLスケール連続式晶析装置の開発 均一で小粒子径の結晶を得ることを目的とし、高速撹拌機を装備したmL一スケール連続晶析装置を作製し、グリシンおよびアラニンの貧溶媒晶析を行った。本装置は容量0.9mlのステンレス容器とホモジナイザー(最高撹拌速度24,000rpm)からなり、溶質の飽和水溶液とメタノール(貧溶媒)を一定速度で供給する。実験は25℃で行い、平均滞留時間や貧溶媒添加比率の影響について検討した。小スケールであるため0.33secという非常に小さい平均滞留時間を実現し、ビーカースケールで得られた結晶に比べて微小で均一な結晶が得られた。さらに、平均滞留時間と貧溶媒添加比率を変えることにより、粒径分布や結晶の形状を制御できることを明らかにした。またグリシンに関しては多形制御もできることがわかった。
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