1.有機化合物結晶の核発生メカニズムを解明する目的で、有機化合物BPPI(C_<16>H_<12>Cl_2F_3N_3O_2)の結晶多形析出挙動と溶液構造との関係について検討した。その結果、BPPIのメタノール溶液からはBO2形結晶が、エタノール溶液からはBO1形結晶が析出することがわかった。両多形の結晶構造解析と溶液中の分子挙動について検討した結果、結晶核が発生する前に、析出する多形結晶の構造に類似したコンフォメーションおよび会合構造が溶液中で既に形成されていることがわかった。また、L-アラニンを用いて、核発生は既に存在する結晶の近くで起こり、順次周囲に広がっていくことがわかった。この結果は、核発生が溶液を通じて連鎖的に誘導されることを示唆するものであった。 2.マイクロ波照射下における有機化合物の結晶核形成:イブプロフェン(IBP)の冷却晶析における結晶核形成に及ぼすマイクロ波照射の影響について検討した。冷却中にマイクロ波を照射しない場合には、約30分後に結晶が析出しはじめた。一方、マイクロ波を照射した場合は、少なくとも260分間結晶化せず、核発生が抑制された。また、マイクロ波照射を停止した後に種晶を添加すると微小結晶が析出した。この結果より、核形成のタイミング制御と結晶サイズの微小化にマイクロ波照射が有効であることが示された。 3.高速撹拌機を装備したmLスケール連続式晶析装置を開発し、グリシンやアラニンの微小結晶を製造するとともに、多形の制御を行った。小スケールであるため0.33secという短い平均滞留時間を実現し、ビーカースケールで得られた結晶に比べて微小で均一な結晶が得られた。さらに、粒径分布や結晶の形状を制御できること、グリシンに関しては多形制御もできることがわかった。
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