研究概要 |
本研究テーマは,1)微量の水分を含む電解質溶液モデルの開発(熱力学的な研究),2)ナノメータサイズ無機塩結晶の生成操作の開発(動力学的な操作),3)スプレードライによる無機塩結晶核の捕集方法(機械装置の検討)に分けられる.本年度は,1)熱力学的な研究では無機塩の溶解度,さらにアルコール水溶液にした場合の希薄溶解度の実験と計算を進めた.その結果,混合溶媒系,混合塩系でも無機塩の溶解度を推定できるモデルの開発が進んだ.2)動力学的な操作では無機塩の希薄溶解性と高過飽和度が期待できるKCl+アルコール水溶液系の溶液を冷却し,結晶成長よりも結晶核発生が生じる操作の実験的に検討した.その結果,一般的な冷却操作でも希薄溶解度の溶液では結晶核発生を促進できた.3)機械装置の検討ではKCl希薄溶解度のアルコール水溶液の微粒化について,スプレードライ法と超音波霧化法を検討した.溶液の揮発性があまり高くないのでスプレードライ法は適していなかった一そこで超音波霧化法でKClを含むアルコール水溶液を微粒化して,その霧を晶析装置に入れて霧の蒸発による結晶核生成操作を行った.霧からの蒸発晶析では霧のサイズだけでも微小な結晶のサイズがコントロールできる.通常の溶解度の霧からの晶析では溶媒の蒸発により霧内部で結晶核発生と結晶成長が同時に起こり結果的に結晶が大きくなってしまうと考えられる.しかし,希薄溶解度の溶液の霧内部では結晶成長よりも結晶核発生が促進され結果的に結晶がより小さくなると期待できる.実際の実験では霧サイズから考えて論理的に最大の結晶が得られた.これは霧内部の結晶化が冷却ではなく溶媒の蒸発によって起こり,アルコールの選択的蒸発が過飽和を下げたことによるものと考えられた.
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