研究概要 |
本研究テーマは,1)微量の水分を含む電解質溶液モデルの開発(熱力学的な研究),2)ナノメータサイズ無機塩結晶の生成操作の開発(動力学的な操作),3)スプレードライによる無機塩結晶核の捕集方法(機械装置の検討)に分けられる.本年度は,2)ナノメータサイズ無機塩結晶の生成操作の開発について超音波とスプレー法を組み合わせた方法を試みた.昨年度までに,混合溶媒系,混合塩系でも無機塩の溶解度を推定できるモデルはすでに開発されていたので,まず今年度取り扱ったエタノール水溶液中のKClの希薄溶解度の溶液を調製した.実験値とモデルによる推算値を比較した結果,お互いの値はよく一致していた.超音波とスプレー法を合わせた霧化操作では,だいたい3μmのサイズの液滴が生成することがわかった.水溶液中のエタノール濃度が高くなれば,溶解度モデルからもわかるようにKClの溶解度は激減する.よって,液滴内で結晶化する溶質量が減少するために,霧化晶析器内で溶媒が蒸発した後に生成するKCl微結晶の大きさも小さくなることが考えられる.実験では,L-1500mm x ID-60mmの円筒の噴霧晶析器を使い,内部を真空にして上部から下部に向かってKCl希薄溶解度のエタノール水溶液を噴霧した.噴霧晶析器の下部にシリコンウエハーを置き,その上にKClの微結晶粒子群を捕集した.そして,捕集したKCI微結晶粒子を光学顔微鏡,SEMで観察し,粒子径,粒度分布,凝集状態を測定した.実験操作では,エタノール水溶液のエタノール濃度を80-99wt%の範囲で変化させた.エタノール濃度を高くするにつれて,生成したKCl微結晶粒子群中の単一結晶の平均粒径は小さくなっていた.その範囲は1000nm-100nmであった.エタノール濃度が低くなるにつれて,凝集するようになった.生成したKCl微結晶はあまり小さくならなかったが,エタノール濃度を調整すすだけで微結晶の平均粒径を制御できることが示唆された.また,エタノール高濃度の溶液では,1液滴1結晶の考え方と一致した.今度,有機溶媒を換えて操作することにより,より小さなKCl微結晶が得られそうである.
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