研究概要 |
イオン液体を用いた新規なバイオプロセスおよび分離プロセスの開発を目的として研究を行い,本年度は次のような成果を得た. 1.イオン液体を利用した新しい酵素反応システムの開発 環境に優しい新しい溶媒として知られるイオン液体を利用した新しい酵素反応システムの開発を目的として,酵素を含むイオン液体のセルロースへの固定化を試みた.セルロースにイオン液体とCandida rugosa由来リパーゼを保持させ,これを用いてラウリン酸ベンジルのエステル合成を行った.イミダゾリウム塩型のイオン液体は10回使用後も活性は保持されていた.イオン液体中のアルキル鎖長の増加に伴い,粘度が増加し,セルロースへの保持率も増加した.さらにアルキル鎖長がC8のイオン液体は繰り返し使用後も残存活性が初期活性を上回り,最大で初期活性の約200%の活性を示した.セルロースにイオン液体および酵素を保持させた系は,新しい優れたイオン液体を利用した酵素反応システムといえる.しかし現時点では保持酵素量が少ないため反応率がやや低く,イオン液体に溶解できる酵素を用いるなど工夫を行うことにより有用なシステムのが可能である. 2.イオン液体を利用した分離システムの開発 イオン液体含浸高分子膜による芳香族化合物の選択的分離を行い,従来の浸透気化法などよりも優れた分離係数を示す膜分離システムを開発することができた.また抗生物質の1種であるペニシリンGのイオン液体による抽出および膜分離にも成功した.
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