水素脆化の抑制および水素透過能の向上を目的として、多孔質アルミナ平板(平均細孔径0.06μm)を支持体として用い、超臨界電解めっき法によるパラジウム-銀合金薄膜の作製を試みた。水素透過係数(単位膜厚あたりの水素透過流束)が最大となる銀含有量(23wt%程度)となるように、めっき液の組成を制御した。なお電気めっき法によるため多孔質アルミナに導電性を付与することが必要であり、めっき前に市販のパラジウム無電解めっき浴を用いて細孔が完全に閉塞しない程度にパラジウムコーティングを行なった。導電性付与後の支持体に、PdCl_2(0.1mol/L)、AgNO_3(0.005mol/L)、KBr(4.0mol/L)、KNO_2(0.1mol/L)、H_3BO_3(0.49mol/L)、グリシン(0.1mol/L)からなるめっき浴、さらには界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテルを用いて、超臨界二酸化炭素存在下(12MPa)でめっきを行なった結果、パラジウムと銀が共析することを見いだした。平均膜厚は約2.2μm、銀含有量は20wt%で、ヘリウムリークのまったくない無欠陥のパラジウム-銀薄膜を作製できた。なお水素透過係数は400℃で3.0×10^<-9>mol m^<-1>s^<-1>Pa^<1/2>であり、純パラジウムを超える値が得られた。 この超臨界めっき技術を、無電解めっきにも応用した。超臨界二酸化炭素溶媒の共存下であるため、酸性条件下でも使用可能なホスフィン酸塩、ホスホン酸塩およびトリメチルアミンを還元剤とするパラジウムめっき浴に注目した。これらの水素が発生する還元剤を使用したとき、超臨界条件下で実施することで水素脆化を起因とするクラックの発生が抑制できることが実証できた。なお二酸化炭素が超臨界状態になる前にめっきが進行するのを抑制するため、二酸化炭素が超臨界状態になった後、高圧ポンプを用いて還元剤を反応場に供給した。
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