当研究室では、金属酸化物等のゾルや湿潤ゲルを方向性を持たせて凍結することで、繊維状やマイクロハニカム状のゲルが作製可能であることを見出している。「アイステンプレート法」と名付けたこの方法を用いることにより、今まで困難であった多孔体のμmレベルの成型が可能となり、その結果、多孔体を利用する機器の小型化や効率化が期待される。 本研究ではこの「アイステンプレート法」を利用して、効率的な環境浄化が可能なチタニア系光触媒のモジュールの開発を目指している。昨年度はまずモジュールの心臓部となる光触媒能を有するチタニア系材料のマイクロ繊維、マイクロハニカムの作製に成功している。そこで本年度は得られた材料を用い、実際に光触媒モジュールを作製し、その性能を評価した。 モジュールの心臓部には比較的複雑な形状に対応可能な繊維状の材料を採用した。これをガラス管に充填し、単一のモジュールとした。実際のユニットはこれを棒状光源の大きさに合わせて、光源のまわりを囲むように複数個配列させる形となる。トルエン(VOCの代表物質)を100ppm程度含む空気をモデルガスに用いて単一モジュールの性能を評価したところ、3000を超えるSV値でもモジュールは1週間以上トルエンを除去し続けた。モデルガス中のトルエンは繊維状多孔体の高い吸着能によってまずは除去され、その後材料の光触媒能によって分解されているものと予想されるが、繊維状多孔体の光触媒能を考えると、断続的な短時間光照射でも、吸着されたトルエンは分解可能であると考えられる。このように開発した材料は高い光触媒能と高い吸着能を有し、これを利用することで高効率な光触媒モジュールを構築することが可能である。
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