環境負荷の少ない化学プロセス(グリーンケミストリー)の開発研究が現在活発に行われている。例えば、活性、選択性の高い触媒プロセスの開発研究も、副反応の制御、省エネルギーの観点から重要である。特に固体酸触媒は腐食性や有害性が低くて扱い易く、液体成分との分離が容易で、廃触媒処理が容易など、環境調和型触媒として注目されている。本課題においては石油中に含まれる直鎖アルカンの有効利用を目指し、n-ブタンの骨格異性化反応を超臨界条件下で検討し、触媒表面上に生成するコーク前駆体の生成を抑制することを目的とした。比較的強い酸点が活性点として求められることから、固体酸触媒として硫酸化ジルコニアに注目し、その構造の解明とともにさらなる高活性化を試みた。 硫酸化ジルコニアについてまずその構造と活性点発現機構について解明を試みた。FT-IRの結果から、室温大気中では表面に強く水を束縛しているが、高温で焼成することで表面の水が脱離してジルコニウム原子上にルイス酸点を発現することがわかった。また一部のOH基がブレンステッド酸点として機能していた。次に酸性質のさらなる向上をねらって硫酸化ジルコニア触媒へのAl元素添加を検討した。共沈法によりAlを添加することによって硫酸根の担持量は増大し、その熱的安定性を大きく向上させることができた。特にAl添加量がアルミナ換算5mol%以下の硫酸化ジルコニア-アルミナでは酸量が増加し、かつ酸強度も向上していた。XPS解析よりAlを添加することでジルコニア骨格内のZr上の正電荷性はより高められていることがわかり、電気陰性度の高いAlによって酸性質が強められていると考えられる。新規硫酸化ジルコニア-アルミナ触媒はアルカン異性化反応で従来の硫酸化ジルコニア触媒よりも高い触媒活性を示し、反応基質の超臨界条件下で反応を行うことでその高い活性を維持することができた。これは超臨界流体の特徴である高い溶解性と拡散性によってコーク前駆体が抽出されるため、優れた酸性質を有する多くの活性点が被毒を受けることなく保持されるからである。
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