研究概要 |
本研究は,親疎水性、細孔径、および固体酸性を制御したゼオライトおよびメソポーラスモレキュラーシーブを触媒として用い,各種のジフェニルメタン誘導体合成のための均一系液相酸触媒反応を固体酸触媒プロセス化すると共に,精密制御されたナノ反応場の分子認識能と固体酸性の制御により,高選択性プロセスを目指している。液相均一系酸触媒反応では,触媒の生成物からの分離の煩雑さに加え、耐酸性の反応装置を用いなければならないことや、触媒の廃棄処理といった問題を抱えている。したがって、グリーンケミストリーの理念からも,固体酸プロセス化は化学者の責務の一つと言えよう。 本研究では,まずフェノールとホルムアルデヒド(35%ホルマリン)からのビスフェノールF合成を行った。工業的にはリン酸や有機酸などの均一系酸触媒が用いられているが、これらの触媒の固体酸プロセス化を検討した。固体酸としては,Al含有量の異なる種々のゼオライトや種々の方法でAlを導入したメソポーラスシリカを用いた。その結果,Si/Al=75のベータゼオライトの触媒活性が最も高いことを見いだした。βゼオライトのSi/Al=75で活性が極大になるのは,水の存在する反応系であるため,触媒の親疎水性が活性に影響を及ぼすためであろう。種々の方法でAlを添加したメソポーラスシリカも高い活性を示した。種々のメソポーラス触媒の中ではポストシンセシス法でAlをMCM-41に添加した触媒の活性が最も高かった。βゼオライトの場合と同様に,選択性は約90%であり,フェノール/ホルムアルデヒドのモル比を30と高くしてもフェノール3量体の生成を抑制することは出来なかった。固体酸プロセス化のためにはもう少し選択性を向上させる必要があることが分かった。
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