1.目的 枯草菌の培養において現れる増殖期からアミラーゼ生産期、胞子形成における細胞内および細胞外の遺伝子産物量を2次元電気泳動(2DE)を用いて経時的に調べ、その動的変化を追跡し、プロテオーム解析を行い細胞内情報を反映した新たな培養フェーズ解析を試みる。本年度は、2DEマップの動的解析可能な画像解析装置を用いてタンパク質スポットの染色過程を経時的に調べることにより、培養フェーズ解析を行った。 2.実験方法 菌株は、アミラーゼ生産菌Bacillus amyloliquefaciens(ATCC-23350)を用いた。小型発酵槽を用いて回分培養を行い、菌体増殖期、アミラーゼ生産期において得られた菌体サンプルを用いて、2次元電気泳動を行い、解析装置としてSmartImager(Horiba Biotechnology)を用いた。この装置は、2DEマップのタンパク質スポットの染色過程を経時的に画像データとして記録し、染色過程を解析できる。タンパク質同定は2次元電気泳動のデータベースを用いた。 3.結果 新規解析装置を用いてタンパク質スポットの染色過程を経時的に解析した結果、染色時間3分からスポットの検出が可能となり、約190個が観察された。スポットは染色時間の経過に伴い増加したが、過剰な染色によりスポットが重なり合い識別が困難なものが多く生じたが、本システムを用い2DEの染色過程を追跡することにより、重複したスポットを精度良く区別することが可能となり、一度の簡便な操作で高い精度で検出しうることが明らかとなった。次に、菌体増殖期の2DEマップを用いてタンパク質同定を行った結果、染色時間3分の2DEマップにおいて11個のタンパク質が同定され、染色時間5分から16個、染色時間8分から5個のタンパク質が新たに同定され、従来より多くのタンパク質同定が可能なことが明らかになった。
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