1.目的 枯草菌の培養において現れる増殖期からアミラーゼ生産期、胞子形成における細胞内および細胞外の遺伝子産物量を2次元電気泳動(2DE)を用いて経時的に調べ、その動的変化を追跡し、プロテオーム解析を行った。 2.実験方法 菌株は、アミラーゼ生産Bacillus amyloliquefaciens (ATCC-23350)を用いた。容積5Lの小型発酵槽を用いて回分及び流加培養を行い、増殖期及びアミラーゼ生産期において得られた菌体サンプルを使用し、2DEを行った。2DEマップの動的解析可能な画像解析装置を用いてタンパク質スポットの染色過程を経時的に調べ、種々の培養フェーズにおける遺伝子産物の動態変化の解析を行った。また、タンパク質の同定は2DEマップのデータベースを用いた。 3.結果 新規解析装置を用いてタンパク質スポットの染色過程を経時的に解析した結果、染色時間の経過に伴い過剰な染色によりスポットが重なり合い識別が困難なものが多く生じたが、本システムを用い2DEの染色過程を追跡することにより、重複したスポットを精度良く区別することが可能となった。次に、本システムを用いてタンパク質同定を行った結果、増殖期では解糖系及びTCAサイクルに関係するタンパク質が同定されたが、菌体外タンパク質は全く検出されなかった。しかしながら、アミラーゼ生産期ではシグマ因子(ストレスタンパク質)や多くの菌体外タンパク質が同定された。このことから、アミラーゼ生産における枯草菌の培養状態の変化を2次元電気泳動で解析しうることが明らかになった。
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