インスリン補充療法に替わる糖尿病治療法として膵島移植が期待されているが、膵島は、体外培養中に機能が低下してしまう。そこで本研究では膵島の機能が維持できる培養技術を目指し、膵島を分散して培養することとし、この場合の最適な足場を探索した。細胞の増殖・分化を制御している細胞外マトリクス成分や、様々な特性を持つプラスチック培養皿を足場とし、(1)細胞の剥がれ易さ、(2)グルコースに応答したインスリン分泌能を測定し、足場の効果を調べた。 雄Lewisラットより膵管内コラゲナーゼ注入法で単離した膵島を、トリプシン処理で個々の細胞に分散した。分散した膵島細胞を、コラーゲン・フィブロネクチン・ラミニンで処理した培養皿と、タンパク質を処理していないプラスチック培養皿に播種した。さらにこれらタンパク質をエタノールで変性させたものも足場とし、検討した。 その結果、膵島細胞は、I型コラーゲン上で最も剥がれ易く、ラミニン、IV型コラーゲンと続き、組織培養用培養皿とフィブロネクチン上で最も剥がれ難かった。また、浮遊培養用のプラスチック培養皿ではI型コラーゲンと同等以上の剥がれ易さを示した。また、インスリン分泌については、浮遊培養用培養皿、ラミニン、次いでI型コラーゲン上で高いインスリン分泌能を示し、フィブロネクチン及び組織培養用培養皿上ではインスリン分泌能が低かった。一方IV型コラーゲンはI型コラーゲンと同等であった。さらにエタノールで変性させたフィブロネクチン上では無変性のものに比べ二倍以上のインスリン分泌能を示した。すなわち、付着しがたい培養環境ほど、インスリン分泌が高いということが見いだされた。
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