研究課題
基盤研究(C)
再生医療では、幹細胞を生体外で必要な量までに増殖させてから、細胞移植の方法で不全臓器の治療に用いられるが、もし増殖させた幹細胞が形質転換していたら、生体に移植した後に異常増殖してがん化するリスクがある。これまで、この幹細胞の培養研究は主に幹細胞の分化能力の維持に焦点が絞られ、この幹細胞の形質転換(がん化)の防止とリスク評価に関してはほとんど検討が行われてこなかった。そこで本研究課題では、肝幹細胞1の一種である肝芽細胞を用いて、形質転換の防止について次の成果が得られた。(I)肝芽細胞をポリ-L-グルタミン酸を被覆したディッシュ上で三次元培養することによって、肝腫瘍マーカーであるPIVKA-IIの分泌が低下し、形質転換を抑制できることが示唆された。(II)上岡教授らによって開発された、正常細胞とがん細胞を識別し、がん細胞のみにアポトーシス細胞死を誘発できる複合脂質膜を、肝芽細胞の増殖の定常期に添加することによって、形質転換した肝芽細胞に選択的にアポトーシスを誘発できることが示唆された。(III)肝芽細胞を大量培養するための培養担体として、市販の担体を数種類用い比較したところ、担体表面の凹凸や材質が細胞の形質転換に影響することが示された。より凹凸の多い担体において、肝芽細胞の形質転換の抑制が示唆された。今後は、材質を揃えて表面形状を制御することによって、細胞の形状と形質転換の関係について、より正確な知見が得られるものと思われる。また形質転換を抑制できる培養担体を創製し、さらに培養培地中への適切な組成の複合脂質膜を、適切な時期に添加することによって、幹細胞を安全に大量培養できる新しいプロセスが構築できるものと期待される。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (9件)
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